∞ 暁務報告 ∞

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暁(あかつき)によるゴッタ煮ブログ【ぎょーむ・ほーこく】。局地的に広く中途半端に深い(笑)趣味で展開してまいります。

感想:真夏のオリオン

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ようやっと感想書きます。



戦争を主題にした映画って、そう言えば私、観たことあったっけ?とふと考え、思い出してみたものの、答えは0。この『真夏のオリオン』(以降、オリオンと略します)にしたところで、玉木宏という人が主演でなければ絶対観ることはなかったと言えるでしょう。今までにも、豪華出演者目白押しとか、名作リメイクとかでいろいろ手を変え趣向を変えて登場してきても、わざわざお金払って観に行くことなんてなかった。
どうなんだろう……夏の風物詩というか、戦争映画を製作するということが、もしも芸能界において必であると定められているのなら、私みたいな釣られ方(笑)であっても有りなのかもしれません。実際、戦争を体験した年齢層の人はどんどん少なくなっていき、たとえば今回のオリオンにしても、玉木くん演じる倉本艦長はじめ、出てくる連中皆、丸坊主じゃないのはけしからん!なんて映画評論家を名乗る人たちが堂々と言い張っていても、いやそれは頭を保護する意味で、丸坊主ではなかったし、ましてや潜水艦乗りの場合、頭を綺麗にするような水も貴重だったのだから……なんていう話はもう風化してしまっていて、件の人たちがモノ知らずを露呈しているに過ぎないなんてことも、私たちにはすでにわからない状態なのかもしれません。
(まあでも、確かにトマト食ってる玉木くんの頭はもうちょっと黒くても良かったとは思うけど……光の加減で気の毒ではあったけど、共演の堂珍嘉邦さんの頭が黒々してたからよけいね(^^;)。ちなみにウチの家系は髪が茶系で、おばあちゃんは非難されないように若い頃から黒く染めていたそうです)

玉木くんをして、オリオンは「ファンタジーだ」と言わしめていただけに、この作品は、実にギラギラとした人間関係や戦闘シーンの描写はなく(そもそも駆逐艦と潜水艦ではそうならざるを得ないでしょうけど)、直裁的な流血描写もなく(魚雷の下敷きになった森ですらそう。正直、これぐらいは流血有りでも良かったんじゃないかと思いましたが)、やたら皆が飲み食いしている--艦長自ら「メシだ、メシにしよう!」と時計の如く言い、イ-77の秋山烹炊長(ほうすいちょう/鈴木拓)は海軍一料理が上手い&美味いと語っていますから(笑。実際、潜水艦はとても過酷な環境のため、食事やビタミン類等は他より豊富に与えられていたそうです)。
そういうわけで、確かに、前々からこの作品について私が書いてきたように、今までの戦争映画とは本当に一線を画す内容であると言えます。ラストあたり、米軍駆逐艦との戦いの決着のつけ方にしたところでそうで、まさかの終戦報告で決まりだったとは。
あえて言えば、回天(人間魚雷)の搭乗員である、遠山との確執もとい一方的な遠山(黄川田将也)からの責めるような視線&最後の拳銃突きつけがあったけれど、それにしたところで、敵である米軍駆逐艦艦長のスチュワート艦長からの「真夏のオリオン」という楽譜に記された、倉本艦長を慕う有澤志津子(北川景子)からのメッセージをもって、「(日本は、あるいは、自分たちは)終わりじゃない、これから始まるんだ」と倉本に言わせ、遠山はその場に泣き崩れます。倉本とスチュワートは互いに敬礼を交わして「オリオンよ、愛する人を導け」という言葉のとおり、各々の「帰り道を見失わないように」家族や恋人のもとへ戻るわけです。
ついさっき、魚雷をお見舞いした(^^;)潜水艦と、海底200m近くまで沈めるような目に遭わせて、その上からまるで重石のように居座って逃げないように見張っていた駆逐艦の艦長同士がそんな敬礼を交わすなんてあり得ない……と言えばそれまでかもしれませんから、ある種「ファンタジー」なのかもしれません。倉本艦長の孫(北川さん二役)が最初っから登場してること自体、彼が死ぬようなことはなかったと最初からネタバレしてるようなものですから、そういう意味でも安心して観ていられる……というか、戦争映画における強烈なカタルシスとやらは、この作品では望めないものかもしれません。

それでも、私がこの作品を好きなのは、常に生きて帰ろうというポジティブな思想で貫かれた作風と、米軍艦長との腹の探り合い(笑)の面白さ、イ-77の搭乗員たちの、良い意味でのキャラ立ち、潜水艦の実にリアルなつくり、レトロな雰囲気の良さに惹かれたこと、ED曲の「願い星」が歌詞、曲、歌声ともども全て素敵だったこと、そして……部下たちの前では笑みを絶やさなかった倉本が、作品のラスト、志津子のもとへ帰ってきたときは全く笑っていなかったことに起因します。彼はやはり戦争はしたくなかった人だったのだと気づかせてくれる、いい表情だと思っています。
地味だけど、見終わった後、何故か妙にほっこりとさせるという、不思議な魅力のある作品でした。

さてと。
ここからは、ツボどころを箇条書きで(笑)。

・艦橋から降りてくると同時に頭から水がバシャッとかかり、「冷て」と呟くのが初登場シーンだなんて噴く(笑)

・ていっ ←おい(笑)
「撃て!」の略ですかねぇ。倉本は3回言ってますが、ラストの「ていっ」がやっぱり一番気合い入っていてかつ低音ボイスですね。

・お楽しみ白軍服のシーン……もうちょっと体に沿う軍服はなかったのかとちと不満。

・メシだ、メシにしよう!
カレーもおにぎりも、実にいい食いっぷり(笑)。観ていてお腹が空くのは迷惑(!)ですが。

・最初のうちはまだ声が少し高め。ラストになるにつれてどっと低音ボイス炸裂。

・水雷科(田村水雷長:益岡徹)の面々がお気に入り。岡山さん、ラストは気合いの入った一番ていっ!でした。私も当たれーっ!と念じましたよ(笑)。

・なにげに小島水測員も気に入ってます(笑)。回天2基作戦に米軍がまんまと乗せられたことを示す報告を言うときの明るい声に、彼の役柄としての気持ちがとてもよく伝わる。

・鈴木一等兵(笑。何故丁寧に呼ばわる)
全編大活躍。音楽の先生になれたよね。そして一度楽譜を見ただけで暗譜してハモニカを吹き、60年以上経った今も思い出して吹けるという素晴らしい才能の持ち主。

・オーケストラの指揮者になりたかった
実はこのセリフ、映画を観る前に言ってるとネタバレがあったとき、私はとてもガッカリしていたのでした。こんなところで他作品のことを匂わすようなことを言わせるなと心底思った。でも実際に映画を観ると、鈴木のハモニカ絡めての音楽ネタでかつ艦長という仕事に合わせたというか……いや、そーんなことよりどうも、相手を笑わせるというか和ますためにこの倉本ってば、でたらめ(おい)壮言大語(こら)を吐くクセがあるみたいで(笑)この後、
・画家になりたかった
もあって、ホッとしました。またおかっぱのお嬢ちゃんに「ヘタだね」とダメ出しされてるのが笑えます。

・ヘタな絵を描いてるときの倉本艦長の足の長さに絶句する(おいおい)
いやマジで(^^;)長い。ふだん、パンツ腰履きしてるせいでそれほど思わないけど、きっちり着こなしたらまあとにかく足長っ!

・トマトは嫌いだったのでは……
でもホント、何食べてても美味そうに見えるのは、さすが永谷園やミスドで培われた(違)

・中津航海長(吹越満)、インテリという役柄設定なのですが、もちっとクールっぽい方が、自由奔放(笑)な倉本との対比になったかな。

・桑田機関長(吉田栄作)、『ミッドナイトイーグル』での共演もあってからのおなじみさん(笑)。頑固親父と自ら舞台挨拶でおっしゃるいい味出しではあったけど、うーん、私はちょっと、この人こういう役柄しかやらせてもらえなくなるんでは、と思うのでありました。朝ドラでもこんな感じだったし。いやまあ、それならそれでいいのかもしれないけどね。

・機関室のピストン運動
とてもリアルでツボ。時計の中のゼンマイの動きとか観るのが好きで飽きないので(元を正せばシリンダー型オルゴールの動きが激ツボ)ああいう機械類のサカサカ動いてる図は萌える(おいおいおい)
潜水艦の中、造りがとっても凝っていて『鹿男あをによし』での下宿のように、詳しく知りたいと思わせてくれます。

・発令所での「乙橘姫 我等ト共ニ有リ」
倉本艦長の後ろ、ちっちゃな黒板に書かれている言葉。これが映画見てる最中はとても気になって調べなきゃ調べなきゃと思っているのに、出たときには忘れてる(爆)。はい、調べました。
「弟橘媛(おとたちばなひめ)」という標題でウィキに出ていましたが、そこには、ヤマトタケルの妻で、荒れ狂う海を沈めるために自ら入水したというエピが記されていました。こういうのって、たぶん実際に潜水艦に乗っていた人たちから取材したんでしょうね。

・メンタンブローとか「かんちょう」とか
潜水艦用語萌え(笑)。「艦長」の発音、最初とても違和感があったのですが、海軍の人から言わせれば、私たちの思う「艦長」という発音の方が違うんですね。
応用編として、気持ちを浮上させろ、というときにも「メンタンブローーーー!」と、心の中で言ってます(笑)。

・いつの間に強気ちゃん(笑)
坪田軍医長(平岡祐太)は火事の機関室に飛び込めるぐらいたくましくなったんだ(笑)ビタミン配布のときに、初回ではキョドってた機関長相手にエンジンだったかモーターだったか油さしにたとえてビタミン渡すのはナイスだと思いましたが(^_^)。

・有澤役の堂珍さんはうーん、セリフはやっぱりどうにもならないけど(とくに海軍のの将校クラブ内外での会話。「ショパンだ」だけは良かった(笑))、目力はあったし、力つきるあたりの表情が抜群に良かったー。でもどうして彼がこの役に選ばれたのか、というあたりが全然わかんない。DVDになるころには何かエピを聞かせてもらえるんでしょうかねぇ。

・浸水するのを止めた後の濡れ髪、帽子を取ったままの姿萌え(笑)
あれ、でもこのときは髪が黒々してる気がするなぁ…やっぱり光の影響かしらん。あと、火事の被害見舞いに来たときの表情や姿もイイ(^_^)v

・機関長には、ちょこっと弱音に似た本音を吐くのはいいのか悪いのか。
自分的にはあの「厳しい戦いになりそうですね」は蛇足だった気も。でもあそこで機関長が何も応えず、ラストのたった1本の魚雷で敵の駆逐艦に対抗しようとした倉本に「あなたなら、勝てる」と言った台詞が生きるかな。

・いやしかしやっぱり一番好きなのは、有澤からのモールスを聴くため潜行するときの「潜れ!」。
いつも穏和で丁寧な口調の倉本艦長だからこそ、このビシッとした命令口調が生きるし爆萌えします(いちいち萌えてどうする(笑))。

・艦長の丁寧口調
特番で、倉本艦長のモデルとなった橋本以蔵艦長付の人(映画で言えば鈴木にあたる人)へ、実際に玉木くんが話を聞きに行く特番があり、そこで話されていたのは、橋本艦長は決して声を荒げることがなかったそうです。狭い艦の中、親しく話すこともできたとのことで、ありえないと否定されることではなかったそうで。
……だから~、いちいちこんな説明がないとわからない世の中になってしまってるんですよ(^^;)それほどに、戦争映画てば、一律にステレオタイプな描かれ方をしていて、それを観る私たちの頭の中に「戦争映画はかくあるべし」というものを刷り込みされている気がします。まあそういう方が楽だしね。もちろん、この作品における、こういう観客相手への説明不足っぷりは否定しませんが。
※真夏のオリオン公式サイトに、この手の説明がQ&Aのかたちで掲載されています。

・海底や空気の少ない潜水艦の中の様子から、米軍駆逐艦の方へシーンが転ずるときの、青い海原の映像が目に嬉しい。いつも私はあの海原あたりで、回天の空気を艦に取り込んだときみたく「ほうっ」と呼吸します。

・私の今回の玉木くん以外の役者さんベストは、回天搭乗員の遠山こと黄川田くん。
ドラマ『風のハルカ』大ファンとしては、あの超ヘタレぼんのボケナスビ(ヒドい(笑))の正巳が、役者さんだから当然なんだけど、よくもまあこんなびしっとした役柄を演じてくれたと感心しきり(仮面ライダーあたりのことは知りませんが)。ハルカとの結納の日に逃げ出したとき、マジでこいつなにしてんねん!と怒り心頭となったのも今では懐かしい思い出(笑)……あ、ハルカのDVD、観たくなってきた(大笑)。
ちなみに玉木くんと黄川田くん、同い年なんですね(学年は玉木くんの方が上)。映画では倉本艦長の方ががっつり上に見えます。

・スチュワート艦長、結構私は好みだったけど(^_^)。彼の弟のエピ(天文学者になりたかったけれど、回天のいけにえとなってしまった)があるからこそ、この作品は、日本側だけに偏らない作品になりえたと思います。まあもうちょっと米軍のエピがあっても良かったのでは、と思うけど……そうなると日本軍側の描写が減るしなぁ(^^;)

・前述のとおり、最後に無事志津子のもとへ戻ってきた倉本が、嬉しくて笑みを浮かべる志津子に対し、まったく笑わないまま歩を進めてエンドロールに入るのが印象的。彼にとっては、部下をひとり亡くし、ましてや、彼女の兄でもあり親友でもある有澤を、もちろん結果的に仕方なかったにせよ見捨ててきてしまったことに深く傷ついていたのでしょう。あそこで笑って駆け寄って抱き合ったりしたら、それはそれでハッピーエンド、めでたしめでたし!だったかもしれないけれど、あの笑わずに歩いていく様子こそ、深い印象を与えたと思います。

・そのエンドロールの中に、海軍のお歴々と、モデルになった橋本以蔵艦長の息子さんのお名前が。お歴々に映画を観てもらった後、「ありがとう」と言ってもらえて嬉しかったと玉木くんが言っていました。確かに、それがなによりの評価でしょう。

・ED曲「願い星」(いつか)はワタシ的ヒット。今は午後3時にひといき入れようと鳴らすアラームの音楽にしています。

・元ネタ原作の『雷撃深度一九・五』(池上司/文春文庫)は戦闘シーンの描かれ方としてはとても好き。ワクワクします。米軍側の方もとても細かく描かれているし。
だけど、主人公?として最初に登場した倉本艦長が、いつも間にか、古参の軍人さんに取って代わられているのは納得できなくてガッカリ。個々の描き方が良かっただけに、最初の方の倉本の描かれ方は何だったのかと混乱してしまいます。

・映画化原作の『真夏のオリオン』(福井晴敏・監修 飯田健三郎・著/小学館文庫)は、まさにノベライズ。小説としての出来ではないけれど、映画についていろいろ補填するにはとても良い参考書でした。

・サントラ
岩代太郎さんは、今ならもっぱら『レッドクリフ』の方で有名なんでしょうけれど、オリオンの曲群も良かった。「願い星」も素晴らしい。
で、サントラのラスト3つのモノローグ編&台詞集がナイス過ぎる(笑)企画。
玉木くんの声の良さが生きていました。そして吉田栄作さんの語りもまた、映画のあるシーンを補填する良い内容でした。

***

あ、志津子とのことを書くの忘れてた(おい)。
背中抱きつきはイイ!萌えます(^_^)
以上。←それだけかよ(笑)

……それだけだとナニですので(笑)。
オリオンの楽譜についてのエピは、私自身良かったんじゃないかなと思います。
制作者側の、少しでもとっつきやすいものにしようという気持ちもわかるし。
潜水艦の中、あの優しいメロディが響いていたというだけでも良かったんじゃないかと。

志津子さんとのエピについては、これぐらいの分量で良かったと思います。
なんと言っても、「生きて帰る」理由ですからね。
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by gyohm | 2009-07-20 08:13 | 映画