∞ 暁務報告 ∞

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暁(あかつき)によるゴッタ煮ブログ【ぎょーむ・ほーこく】。局地的に広く中途半端に深い(笑)趣味で展開してまいります。

スカイ・クロラ

2回目、観てきましたので感想を。
でも「まだ」2回目なので(笑)断片的ですが。




以下、ネタバレだらけ(!)です。

敵のエース「ティーチャー」の乗るスカイリィという機種のプロペラ機を見た者は生きて帰れないという話を裏付けるシーンが出てきます。ボロボロに撃ち抜かれた機から脱出しようとした者ですら、人の形も成さない赤色の飛沫だけとなってしまいます。

一転してパイロットからの目線で機体が着陸するところまでが、あの西田社中の大音声を伴った美しい弦楽器の旋律の中映し出され、きっぱりとスタッフロールが日本語と英字の両方の表記で出てきますが、英字の出方がふわふわと浮いていてきれい。そうして最後は「監督 押井守」の文字。ここだけ日本語表記の文字が滑走路の影となって一瞬現れ、機体の影へと変わるところでニヤリ。暑苦しくなくっていい表現だと思う。

西田社中は、『攻殻機動隊』『イノセンス』と続けての登場。先の2作は古代の日本というかアジアン地域の無国籍テイストだったけれど、今回はもうそれも飛び越えてしまって、ただただ神々しい「音」になって……ええぃ、隣の兄ちゃん!お願いだから横でポップコーン食うな!ていうか食う音させるな!(怒)

音楽ももちろんだけど、今までにも増して今回は、ちょっとした「音」がとてもリアルに響きます。何もかもに、「あるべき」音がついていて聞こえてきます。マッチを擦る音、軸を折る音、窓ガラスを指でなぞる音、歩くときにすれあう金具の音等々……犬の歩いたり走ったりするときに生じる爪の音はもう『イノセンス』のときに実感済みで、ついでに言うと……脱糞音まで聞かせてくれなくても(^_^;妙なところまで細かいぜ!(大笑)

たんたんとストーリーは進んでいきますが、その端々に、今回は結構わかりやすいヒントを落としていってくれてると思います。折れたマッチは何度もクローズアップされるし、新聞をぴしーーーっと折るところや、周囲の独特の空気などなど。
んーただ、どこかで読んだ感想に、ササクラ(整備主任)が腹が立つ、みたいなことがあったけれど、こうして自分が観てみると、なるほど、確かになんとなくわかるような気がした。だって、意味ありげなことを言って振っておきながら途中で切って立ち去ってしまうところが多すぎるから。そのくせ妙に、「キルドレ」であることの意味を知って混乱するミツヤに対し怒鳴るのもなぁ。ミツヤは最初からカリカリしてるけど、それはまさに「感づいてしまった」ことに対する感情の発露の結果なので、あまり悪い印象は持たない。

どれもが、たとえば、物理的な衝撃(それこそ戦争でもって撃墜される、あるいはピストルで撃たれる)以外、死ぬことがないというキルドレの特質(そのような特殊な効能のある薬品名であるとミツヤが実に丁寧に説明してくれます。押井作品には画期的なほどきちんと説明しているセリフがあるので、むしろビックリしました)。そうして亡くなってしまっても、せっかく培った戦闘能力まで失ってしまうようなことはなく、どのようにして「移し替える」のかという方法までは見えないまでも、次に別の名や姿に変わっても、ついでに個人の「癖」ともどもそれは移行され、つまり「永遠に生き続ける」ことを強いられる存在であるということ−−それらを感づいてしまったミツヤの、やり場のない怒りの矛先が、キルドレなのに生き続け、ティーチャーという、パイロットなのに大人の男と関わりあって子どもまで産んで、その後愛したキルドレ(それがユーイチの前任者)を撃ち殺したらしいクサナギに向けられます。

新聞をきっちり折り入れてたたむ癖を持った同僚がティーチャーに撃墜された後、基地に赴任してきたキルドレが、全く同じ癖を持つことに気づき、ミツヤの話でダメ押しされたところに、銃声音。「今日は(基地に)いた方がいい」というユーイチの勘どおり、クサナギに銃を向けるミツヤを押しとどめるところなんて、ふだんはポーーーとした感じの(プロペラ機に乗っているときはともかく)ユーイチの表情が変わっていくのがいい。銃声音を聴いた瞬間の表情も良かったけど、ミツヤの銃を取り上げ、彼女を追い出した後、「『今度は』自分を撃って」とせがむクサナギの横を銃弾が行き過ぎるところはたまりません。クサナギのおかっぱ髪の一筋が、その銃弾の通り過ぎる瞬間、ふあーっと浮き上がるんですよ。そのときクサナギの目は見開くし、銃声音は、もちろん、さっきユーイチが部屋にいるとき聞こえたものとは比べようもないぐらい大きくて腹にこたえる。妙にキルドレたちの会話などふだんの様子がふわふわと夢の中にいるような感じなのに、そういうこと(戦争も含め)については、きっちりリアルに描かれているところがたまりません。そうやって、たぶん、ユーイチという名前になってから初めて(あえてこういう書き方をする と)ユーイチは、思い切り感情をむき出しにしてクサナギを抱き締めるのもいい。

そうして彼は、ティーチャーに「僕の戦い」と言って挑んで……やっぱり撃墜されます。彼は最初の戦闘シーンのように操縦席から離脱しない。けれど、あきらかに操縦席のあるカバー?部分のあたり、撃たれたとたんあの赤い飛沫が見えるのが、何ともリアルでやるせない。
ちなみにこのティーチャー、あの新聞紙をきっちり折るキルドレが撃墜された後、ユーイチの乗り込むプロペラ機を横取って乗って攻撃したクサナギについては、とどめをさしてないんですよね。戦い方でわかったのか、あるいは姿を認識したか。生きて戻れないはずなのに、彼女はプロペラ機ごと墜とされただけで助かった。運だけの話じゃないと思うし、彼女もたぶん逃げようとは思わなかったはずだと思うので、ティーチャーが手心加えたことになるかと(それもまた、クサナギにトラウマとなって残るでしょうけど)。

ユーイチが帰ってこないことに、同僚のひとりひとりが諦めた表情で去っていき、最後から三番目(笑)のクサナギが、タバコを吸いかけてやめてしまうのは面白い。この映画ってば、みんなよってたかってこの禁煙モードな世の中に反してタバコ吸いまくってますからね(笑)それどころかユーイチの口から「タバコを吸わない上司を信用しないことにしている」って言わせてる。けっ。←タバコ大嫌いのヒト(笑)
ま、それはさておき(^_^;「今度は」タバコを吸わなくて信用できない上司、から始めて、少しずつ辿ってきたルートを変えていく作業を始めたってことかな、と思います。
案の定エンディングロール後、ユーイチの「次」が赴任してきます。マッチ、折ってます(笑)。そしてクサナギの部屋に挨拶に来たとき−−最初はダテ?眼鏡をかけていたクサナギは、今回は外して接しています。それはユーイチが、ティーチャーに戦いを挑む前、空から観る海と陸地の光景が映るとともにとつとつと語る、「いつも通る道だからって景色は同じじゃない」というモノローグにつながり、君は生きろ、とユーイチに抱き締められながら言われた言葉を守ってる気もします。

***

それにしても「移し替え」はどのように行われるのかな。
攻殻機動隊やイノセンス風で言えば、ゴーストのコピー?(笑)でも劣化しちゃうよね。私の場合、これより先に思い出したのは、エヴァの綾波レイでしたが。

ダイナー前にいつもいる老人について、なーんにも、ちーっとも語られない。
だけど、ダイナーのマスターは横に座ってタバコを吸ってる。
あのじいちゃんは何者なんだろう? そのうち、どっかで押井監督に語ってほしいけど、どうだろう?
それともあのじいちゃんすら、「前」の自分の記憶のトリガーのひとつ……なのかな?

「繰り返し」が好きな(おーい)押井監督の、まさに真骨頂な作品だった気がします。今回はなんてったって、編集しなくったって、原作自体が「繰り返し」を描いてるからバッチリですよね。それでも先述のとおり、ずいぶんわかりやすく表現してくれてると思います。
原作を読もうかどうしようか考え中。もうちょっと、間を空けるかな。

うっそうとした木々の合間から現れる娼館のたたずまいには、イノセンスでの、択捉にあるロクス・ソルス社の時同様、溜息が出ました。私が押井監督の映画が好きなのは、話の内容が一筋縄ではいかないこともありますが、この圧倒的な美しい描写と、それに負けない音楽にあります。映画を見終わって、私の中に音楽の残らない映画は、私にとってはまず駄作。キャストがいくら良くてもね。
もっとも、イノセンスについては、エンディングの「Follow me」は押井監督のお気に入りではなかったようですが(鈴木プロデューサーの肝いり)、それで初めて押井作品に引っ張られる格好になった私にすれば、ちょっと複雑ですけど(笑)。
それはともかく、今回のエンディングとなった絢香さんの「今夜も星に抱かれて…」は、まあもう実に映画に合った……合ってるけど、めちゃくちゃウエットな(^_^;歌でした……って、それはもう「Follow me」にしてもそうなんですけど(爆)。
まあしかし、今回、実はまだサントラ買ってないんですよ、このワタクシが!(笑)それというのも、サントラにこの「今夜も星に抱かれて…」が入ってない。その代わり、と言ってはナニですが、幻となった川井憲次版エンディング曲が入ってるとのこと。まあどっちにしてもサントラは買いますが、そりゃやっぱりひとつにまとまってるとラクチンですわな(笑)。……まあ、エンディングはDVDのとき、余韻ともどもスタッフロール眺めながら聴くのが一番オツかな。
★iTSで購入しました(笑)

戦闘シーンは、こんなことを8月15日という日に書くと不謹慎ですが、確かにキルドレたちにとって「生きている」という実感を得られている場だと思いました−−同時に「死ぬ」ことでもあるのですが。

1回目のときにも書いたけれど、声優陣については私は文句なしです。
ハウルのときのキムタクだってオッケーだったおいらに誉められたくないって?(笑)でもあのときのキムタクも良かったってきっぱり思ってるもん。

現在、公開2週目で、7位→9位という動きですが、ワタシ的にはよく2週目もベストテン内にいたなぁと(笑)あれ、イノセンスはどうだっけ…覚えてないや(^_^;まあとにかく、あの展開、あのラストでは、おおよそ華々しいものは望めないとは思いますが。押井監督の「大ヒットでなければ(監督を)やめる」発言は、どの程度のナニについて言ったかな?
とはいえ、上映期間、長くあってほしいなぁ。もう1回ぐらい映画館で観たいけど、休みの日しか行けないのがネックだなぁ。

何はともあれ、私にとっては好きな作品のひとつとなりました。
(イノセンス時のような狂った感はないっすが(笑))
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by gyohm | 2008-08-15 11:49 | 映画